私たちの日常生活において民法を意識することは少ないのではないでしょうか?
しかし、民法は市「民」のことについて定められた「法」律と言われることから「住む家を借りた」や「結婚する」や「車を買った」という、私たちの普段の生活について定められた法律ということができます。
上述した例から分かるように、民法は契約に関する定めが多いのが特徴とも言えます。そこで今回は契約という部分にフォーカスして説明します。
なお、民法は2020年4月1日より改正されています。これは、典型契約の規定も例外ではなく、大きく内容が変わった部分も多数存在します。そのため民法改正のポイントも取り上げながら説明したいと思います。
民法とは?
民法とは、市民相互間の法律関係の最も基本的なルールを定めている法律です。個人の方の生活に関わる法律問題も、法人・事業者の方の事業に関わる法律問題もすべてこの民法を基本としているといってもよいでしょう。それだけに、司法試験も含めた各種の法律系国家資格の資格試験では、必ずといってよいほど、この民法が受験科目とされています。
日本で最初に民法が制定されたのは、明治29年のことです。その後、数度の改正が行われていますが、基本的な内容は大きく変わっていません。そのため、現在の実情に沿わない部分もでてきています。そこで、2020年4月1日に民法の大幅な改正がされたというのが一連の経緯となります。
補足となりますが、一般法と特別法の分類についても説明します。
これは、日本国にたくさんある法律を、大きく2つに分類したもので、一般法とは、広く一般的に適用される法律のことで、特別法とは、限られた人や場面においてだけ適用される法律のことをいいます。廃棄物業界を例に考えますと、民法は,広く一般的に,私人に対して適用される法律ですが,廃棄物処理法は私人の中でも,廃棄物に関係する人に対して適用される法律です。
このため、民法は一般法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃棄物処理法と表記)は特別法と言えます。
民法と契約(廃棄物処理法との関係)
民法上、契約は、一方の申し込みの意思表示に対して、相手方が承諾の意思表示を示すことで成立します。もちろん書面は必要ありません。これを念押しするように改正民法でも明記されました。契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。(改正民法第522条2項)
説明を分かりやすくするために、廃棄物処理委託契約を例に挙げ説明します。
契約は民法上意思表示で成立しますが、廃棄物処理法では、契約内容を明確にするため、委託契約は書面により行うことが義務付けられています。
しかし、この法令には特別法があり、「e-文書法」と言われる電子文書法及び「環境省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則(平成十七年三月二十九日環境省令第九号」に基づくことで、委託契約書を書面ではなく電磁記録で運用保存することが認められています。
まとめると、廃棄物処理委託契約の成立は民法に基づくわけです。
民法と電子契約
改正民法では多くの変更点がありますが、電子契約と関係のある改正があるため説明します。
契約の当事者が離れた場所にいるとき契約の成立時期についてです。旧民法では、隔地者間の契約においては例外として「発信主義」が採用され、承諾の通知を発信した時に契約が成立するとされています。これは、隔地者間の契約において「到達主義」を採用すると承諾者が履行の準備を行うのが遅れて取引の迅速性が損なわれるためです。
しかし、インターネットが普及した現代では、迅速な契約の成立を望むならメールを利用すれば済む話です。事実、すでにインターネット上の取引については電子消費者契約法で到達主義が取り入れられています。
そこで今回の民法改正では、隔地者間の場合でも原則どおり到達時に契約が成立するものとされることになりました。付随して契約書作成時にも注意が必要です。契約書実務においては、契約書に記載された日付が当事者間で意思表示がなされた時とされるのが一般的です。なお、電子契約では当事者が同意した日時が電子データとして記録されますので、これが契約成立日となります。
問題となるのは契約書を作成する日と契約書の効力を生じさせる日をあえて別の時点とする場合です。この場合は契約書の中に「本契約書は○年○月○日から適用される」といった条項を設けて契約書の効力が発生する日を明記するか、予め同意していたという旨の証拠を保有しておくことが望ましいです。
まとめ
今回は、廃棄物業界 聞きなれない法令シリーズ「民法」と電子契約についてご紹介させて頂きました。2020年4月1日の改正された民法は、IT化に対応したと言っても差し支えないでしょう。個人の方の生活に関わる法律問題も、法人・事業者の方の事業に関わる法律問題もすべてこの民法を基本としていますので、本記事で紹介した内容を踏まえ改正内容をしっかり確認し事業を進めていくことが望ましいといえます。